地球で最初の生命が生まれた場所ともいわれる深海底の「熱水噴出孔」の周囲で微弱な電流を確認したと、海洋研究開発機構と理化学研究所のチームが発表した。この電気エネルギーが、海中の有機物から生命が生まれるための重要な役目を担った可能性があるという。10日付のドイツ化学会誌電子版に掲載される。
チームは2015年、沖縄本島の北西約150キロで、深さ約1000メートルの海底を無人探査機で調査。噴出孔を中心に最大約100メートルの範囲を調べ、下から上に向かって乾電池の数分の1程度の電流を確認したという。
海底下でできる熱水には硫化水素など電子を放出しやすい物質が多く含まれる一方、海底上の海水は電子を受け取りやすい物質を多く含む。噴出孔付近の海底は、電気をよく通す硫化鉱物が沈殿した特有の状態であることも、電流発生に働いているという。
地球の生命は約40億年前、高温高圧の熱水噴出孔の周りで誕生したとの説がある。だが、生命のもとになる有機物から、DNAや組織など生物に欠かせない複雑な分子がどのように作られたかは不明だ。チームの山本正浩・同機構研究員は「熱水噴出孔の周辺は『天然の発電所』。この電気エネルギーが生命誕生の鍵となったかもしれない」と話している。【阿部周一】
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http://mainichi.jp/articles/20170507/k00/00m/040/113000c