人類は、これまで経験したことのない新たな情報化時代に突入しています。すべてがつながっている社会の中で「情報」が新たな文明のキーワードとなり、人工知能技術の発達は、人間とは何かというアイデンティティと人間らしさの価値を顧みさせています。
物質文明の急激な発達による地球の生態系の脅威と人間性喪失時代の中で、持続可能な人類と地球の未来への不安や恐怖は高まっていきますが、その答えは結局、人間が脳をどのように認識し、活用するのかにかかっています。今日の人類文明を作ったのが人間の脳の無限の創造性であるように、人類が当面している現在の危機を解決するカギも人間の脳の中にあるのです。
脳教育(Brain Education)は、人間の脳に内在している人間性を目覚めさせ、回復させる「ピース・テクノロジー(peace technology)」です。平和哲学、脳の発達原理、体験型教育方法論をもとにした脳融合教育として、すべての人が人間らしさの価値を回復し、人がそれぞれに持っている創造性の開発を促します。体と心のもとである脳を活用する教育を通して、人間は自然の一部だということに気づき、内なる生命力を回復することによって、自然知能を目覚めさせる「ヒューマン・テクノロジー(human technology)」でもあります。
主な先進国は、人類の未来の資産であり、科学の最後の領域である脳の研究に集中して投資しています。これにより、物理学、科学、生命工学、認知科学、心理学など、あらゆる分野で融合研究が活発に行われています。人間の脳についての深層的な研究成果は、学問の発展はもちろん、健康、教育、文化など、社会全般において、脳への認識を深めるのに役立つことでしょう。
しかし、科学の進歩がもたらす人間の脳に関する知識の重要性は、結局のところ、正しい脳の活用にあります。脳は、基本的に情報処理器官です。同じ情報でも、どのように処理し、どのように脳を開発するのか、また、どの方向を追求するのかによって、まったく異なる結果がもたらされます。すべてがつながっている情報化時代では特に、情報が脳に大きな影響を及ぼします。脳教育は、人間の脳の情報処理技術として、創造的で平和な脳を作るために開発されました。人間の脳を、ただ研究対象と見るのではなく、活用の対象と認知するとき、人類が追求する健康で幸せで平和な人生のためのカギが、私たちの脳の中にあるということを自覚するようになるからです。
脳教育は、長年の学術研究と脳科学研究、30年以上にわたる健康、教育、自己啓発など、広範な分野の適用過程を経て、世界で初めて脳教育分野の四年制大学と大学院(修士・博士課程)を設立し、学問的に体系化しました。
脳教育は、韓国の精神文化資産と21世紀の脳科学が出会って誕生しました。韓国の精神文化には、生命への畏敬の念と自然共生思想を強調した「天地人」精神、体と心を分離せずに治めた「心身双手」の生活文化、人間の意識成長の原理と方法論である「水昇火降」、「心気血精」、「精充気壮神明」のトレーニング体系などがあります。
また、韓国の古代文献である『三一神誥』の「真理訓」には、「自性求子 降在爾脳」という一節があります。これを紐解くと「本性に探せ。すでに汝の脳に降りてきている」という意味です。このような思想とトレーニング体系は、今日の脳教育の哲学と方法論の基盤となりました。脳教育の平和哲学は、「広く人間を利する」という檀君朝鮮の建国理念であり、人類普遍の精神を内包した「弘益人間」思想に根ざしています。
脳教育は、人間の脳が持つ「創造性」と「平和性」という両輪のバランスポイントを回復することによって、持続可能な人類と地球の未来づくりを目指しています。人類の意識と文明に大きな変化をもたらせるという確信と信念を持ち、平和技術として脳教育を国際社会に伝えていく道に、多くの方が参加してくださることを願っています。
一指李承憲(イルチ イ・スンホン)
http://ilchi.jp/