[社会・文化]2020年の日本、100年前にここまで見通した男

東京五輪が開催される2020年の日本の姿は? わずか2年先を見通すのも簡単ではないのに、100年後を予想するという試みがあった。今から98年前、大正時代の雑誌の企画に文化人や学者ら総勢370人が見解を寄せた。「火星旅行ができる」「日本の人口は78億人」などと多くの人々が夢物語を描く中、国民の平均寿命や、運輸・通信技術の発達など、現代の日本の姿を鋭く見通した男がいた。一体、何者なのか。

人口規模、平均寿命で近似値を予想

「服は男女とも9割が洋服に」「都市ではアパート式建物が激増する」など、現代社会を彷彿ほうふつとさせる予想をした人たちはいた。しかし、何よりも筆者の目をくぎ付けにしたのは、“敷津林傑”という人の予想だった。

敷津は、約490文字の短文の中に、約10項目にわたって予想を羅列していた。日本の領土がフィリピンや現在のロシアの一部まで広がるなど、現実とは大きく違っている部分もあるが、特筆すべきは、具体的な数字を挙げて将来像を描こうとした点だ。しかも、そのいくつかは、ほぼ100年後に当たる現代の数字に近いのだ。

例えば、国民の平均寿命。厚生労働省によると、1921~25年にかけて日本人の平均寿命について調査した記録では、男性が42.06歳、女性が43.20歳となっていた。こうした時代に敷津は、衛生状態がよくなることなどで100年後の日本人は「80~90歳まで生きることができるようになる」と予想した。

2017年7月に同省が発表した16年の日本人の平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳で、ほぼ的中している。

人口についても、おおよその規模を見通していた。

1920年の日本の人口は、約5600万人。敷津は100年後の人口を「1億8000万人」と予想した。総務省によれば、17年12月現在(概算値)で1億2670万人。的中はしそうにないが、「78億人」などの数字に比べれば、大まかな数字をつかんでいたと言えるだろう。

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