キャリア教育が注目を集めています。働く意味について考え、将来、進む道を決める力を身につけ、「その道のプロになる」ための準備をする教育です。
キャリア教育とは、自分自身の「鉱脈」を掘り当てることだといえます。試験などに備えていろんな分野を少しずつかじるのではなく、一本の線をずっと深く掘っていくことで自分自身の「鉱脈」にぶつかる。そうすることで、グローバルに活躍できる創造的な大人になるための基盤をつくります。
キャリア教育の基本は、(1)勤労観・職業観を育てる(2)職業についての知識(3)自己の個性の理解――だとされます。このうち、現代教育において最も重要なのは(3)だという意見が多いです。人生の目的意識を養い、それに基づく職業選択をするには、自己分析から始めなければならないからです。とりわけ、受験対策に時間をとられ、自ら主体的に職業について考える機会が不足しがちな高校教育においては、キャリア教育の充実は急務です。
キャリア教育の概念はまず英米で広まり、教育改革の一環として推進されてきたといいます。1960年代からキャリア教育が急速に発展したアメリカでは「コーポラティブ・エデュケーション(共同教育)」とも呼ばれ、学校の教育理念に賛同した企業が教育の一環として就業体験を行うという制度が普及。企業、大学の相互協力で人材形成を行う取り組みが活発になりました。
日本でも大学などでキャリア教育が検討・導入されてきましたが、普通科高校教育についてもキャリア教育を推進すべく、文部科学省が2006年に有識者で構成する調査研究協力者会議を設置し、報告書をまとめました。
報告書では、各高校は「生徒が働くことの意義や大切さを理解するとともに、積極的に仕事に就き、働く意欲、態度を身につけるなど、将来の社会的・職業的な自立に必要な意欲・態度や資質、能力を養うためにもキャリア教育に取り組む必要がある」と指摘しました。
しかし、高校の3年間は、どうしても大学受験の準備が重視されがちで、キャリア教育は文科省が期待していたほどのペースでは進んでいないのが現状のようです。
キャリア教育を充実させるためには文科省を中心として関係省庁や自治体が連携するだけでなく、企業やNPO(民間非営利団体)といった民間、さらには家庭や地域社会も巻き込んだ活動が必要になります。