[教育]「無条件の存在承認」が子どもの前進を促す

すでに、よくとりあげられていることですが、日本の子どもたちの自己肯定感は、諸外国に比べて、非常に低いというデータがあります。これもまた心痛むことですが、日本全体の自殺者数は減っているのに、自ら命を絶つ小中高生の数は減っていないといいます。

 私が出会ってきた子どもたちの中にも、「自分には生きている価値がない」とまで言う子どもがいました。この世に生まれてきたすべての子どもたちに「自分は価値ある存在だ」と感じてもらいたいです。どんな関わり方によって、子どもは存在価値を感じ、前に進む力を得ていくのでしょうか。あらためて考えさせられた事例をご紹介します。

■「大切な存在」と伝える

小学校4年生の担任、Y先生のクラスには、日頃から、「どうせ私なんか」が口癖になっているAさんという児童がいました。小さい頃から、家庭で何かと厳しく叱責されてきたらしく、自己肯定感が非常に低いようでした。
低学年の頃から、その傾向はありましたが、4年生になって、特に、自己否定感が強くなり、教室にも居づらいのか、しばしば保健室に逃げ込むようになりました。「どうせ私なんか、いてもいなくてもいい」、「どうせ私なんか、何もできない」と言っていました。

Y先生は、クラスの子どもたちと話し合いをしました。「どうしたら、Aさんと教室で一緒に勉強することができるだろうか?」と問いかけると、数名の女子児童がAさんと話してくると言って、教室を出て行きました。翌日から、Aさんは教室に戻りました。
Y先生はとても驚きました。「なんて言って説得したの?と聞くと、「Aさんには、教室に一緒にいてほしい。4年1組の大切な仲間だから」と言っただけと言うのです。Y先生は、この時のことを非常に感慨深く話してくれました。

「子どもたちは、実にシンプルだと感じました。Aさんのために、自分もあれこれ考えたつもりでした。でも、その前に、『大切な仲間だから、ここにいてほしい』。こんなにシンプルで大切な言葉が、どうして自分の口からは出なかったのかと反省しました。子どもたちはすばらしいです。感謝しています」。

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