[健康] 第7回メンタルヘルスセミナー「睡眠の質とメンタルヘルス」開催

特定非営利活動法人IBREA JAPANは2021年11月3日(水)、「第7回メンタルヘルスセミナー~睡眠の質とメンタルヘルス」をオンラインで開催しました。テーマは「睡眠の質とメンタルヘルス」。今回のセミナーでは、心と体の健康法として世界に広まっている脳教育プログラムの開発者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)国際脳教育協会IBREA会長が、初めて講演しました。また、福島県立医科大学医学部の瀬藤乃理子・准教授(公認心理師)、韓国政府公認ブレイントレーナー協会のノ・ヒョンチョル事務局長の講演、IBREA JAPANの田中ゆかり理事長と睡眠クオリティ指導士の土井美智子・ブレイントレーナーの事例発表が行われました。

●李承憲会長「脳の主としての意識を」

[写真=IBREA JAPAN YouTube アーカイブ]

本セミナーでは冒頭、一指 李承憲IBREA会長が講演を行いました。ニュージーランドから登壇した李承憲会長は、睡眠について「(人間は本来であれば)夜になると自然のリズムによって完全にリラックスした状態で眠くなり、寝ている間に脳が体を完全にリセットする。そして、朝目覚めると新しい生命を得たようになる」と指摘。ところが、現代人は「多くの情報とストレスの影響で自然のリズムと一致した生活を送りにくい環境にある」と分析しました。

この解決策として、誰の脳にもある「感情洗濯機」の機能を活用することを提案。そして、「まず自分が『情報』『ストレス』『環境』に支配されていたと認識する。次に、自分の脳の主として、『情報』『ストレス』『環境』をコントロールする意識へと転換する」ことが大事だと述べました。これが脳教育とヒューマンテクノロジーの核心ポイントであり、「共生を目標として人類を光明の意識に転換するヒューマンテクノロジーで精神文明時代を拓いていこう」と提案しました。

●瀬藤乃理子准教授「睡眠と心の健康」

[写真=IBREA JAPAN YouTube アーカイブ]

続いて瀬藤乃理子准教授が講演しました。瀬藤准教授は、福島県はじめ全国のコロナ感染者および患者家族のメンタルヘルス支援に取り組んできました。本セミナーでは、現場での経験や臨床心理学界の研究成果をふまえ、「睡眠とこころの健康~コロナ禍をしなやかに生きる~」をテーマに、実践的なレクチャーを行いました。

瀬藤准教授は「不眠症は、ストレスに関連する病気の代表選手。心の健康に直結すると言われている。不眠を改善することが、心と体の健康度を上げるうえで重要になってくる」と指摘しました。

睡眠にかかわる脳内ホルモン「セロトニン」を増やす方法として(1)運動する(2)瞑想する(3)昼間に太陽の光を浴びる――などを紹介。また、「睡眠ホルモン」とも呼ばれる「メラトニン」の分泌を促す方法として「リズミカルな運動を習慣化する」ことなどを提案しました。

このうち瞑想については、「セルフ・コンパッション」(自分への慈悲)を高め、心理的幸福感を増大させるといった海外研究者らの見解を引用。「喪失とストレスに満ちたコロナ渦において、メンタルヘルス守る方法として、瞑想のアプローチが有効だという(研究)報告がいくつも出ている」という現状を報告しました。

●ノ・ヒョンチョル教授「主体的にコントロール」

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この後、ブレイントレーナー協会事務局長のノ・ヒョンチョル教授が、「失った眠りを求めて~睡眠の問題への脳教育からのアプローチ」と題して講演しました。

脳教育を専門とするノ・ヒョンチョル教授は「多くの人が過去を回想して、眠れないことがある。過去の後悔、悔しかったり、辛かったりしたことなどだ。寝ようと横になったのにこれらが刺激になって睡眠を妨げる現象が起こる」などと指摘。こうした現象や外部環境が、いろいろな形で睡眠に影響を与えることになるとしたうえで、自ら主体的に脳内の情報や生活習慣をコントロールすることによって睡眠を改善するという脳教育な手法を紹介しました。

また、瞑想や体操などの脳教育のブレイントレーニングも合わせて行い、意識ではコントロールできない無意識のストレス要因を解消することにより、さらに睡眠の質が高まった自身の睡眠コーチングの事例も紹介しました。その事例者には、睡眠を改善することにより、人間関係の向上、むくみ解消、能率の向上などの変化が見られました。さらに、「自分自身を愛し大切に思える」ようになり、それが「睡眠の変化に決定的な影響を与えた」と言います。

最後に、生活をコントロールし脳を管理することにより、睡眠管理にとどまらず「脳がもつ本来の機能、本来の無限の価値と可能性を最大に引き出して活かせる」、「脳教育のスピリットを忘れずに主体的に心身の健康な生活を営んで」ほしいと述べました。

●田中ゆかり理事長「睡眠クオリティ指導士を養成する」

[写真=IBREA JAPAN YouTube アーカイブ]

続いて田中ゆかり・IBREA JAPAN理事長が、「成幸(せいこう)する睡眠」について講演しました。

<睡眠負債トップの日本>

田中理事長はまず、日本の睡眠不足の現状について解説しました。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本の睡眠時間はワースト1位になっており、「睡眠負債大国」と呼ばれています。田中理事長は「睡眠負債とは、日々の睡眠不足が借金のように積み重なって、心身に悪影響を及ぼす恐れがある状態。『睡眠不足』は1日単位だが、『睡眠負債』は毎日少しずつ積み重なっていく。負債の蓄積により、業務上の事故や心身の問題にまで発展していく」などの弊害を問題提起しました。

<若者からリタイア世代まで>

さらに、コロナ渦により、日本に限らず睡眠問題が深刻になっていると分析。アメリカの睡眠医学会の調査(2020年)によると、パンデミック以前は睡眠障害の人の割合は20%だったのが、コロナが始まってから60%へと増加したなどの近況を紹介しました。

また、日本では高度経済成長期からバブル期にかけて、睡眠を削って頑張ることが立派だというトレンドがあった点を指摘。今でもその流れが残っており、企業・学校でも早朝から遅くまで働き続けることで慢性的な疲労を抱えており、その結果、睡眠負債を抱え、心身共に病んでいる人が増えていると言われるなどの社会的な問題点も挙げました。また、若い世代の深刻化する睡眠不足についてのデータも紹介しました。

<睡眠コーチング・プログラム「Power Brain Sleep」>

そのうえで、これらの睡眠問題に対するソリューション(解決策)として、脳教育のメソッドを使った睡眠コーチング・プログラム「Power Brain Sleep」を開発したことを明らかにしました。人間本来のリズムを取り戻し、睡眠の質向上により、脳を休ませて自律神経を安定させることにより、心身の健康と、生産性・創造性・自己愛を向上させるプログラムです。

田中理事長は、睡眠コーチング・プログラムは、「自律神経を整え、脳機能を活性化させる。本来の明るさを取り戻し、自分を大切にする力、感情をコントロールする力を高めることができ、ストレスに強くなる」としました。子どもから高齢者まで気軽に実践できるといいます。

具体的なプログラム内容としては、朝のブレイン体操、昼間1時間ごとに1分ずつの運動、夜の呼吸とブレイン瞑想などで構成されます。これらのプログラムを普及させるため、今後、IBREA JAPANとして新しい資格制度「睡眠クオリティ指導士」の養成に取り組む、と表明しました。

●土井美智子・睡眠クオリティ指導士の報告

[写真=IBREA JAPAN YouTube アーカイブ]

この後、睡眠クオリティ指導士として既に様々な活動に取り組んでいる土井美智子・ブレイントレーナーが、睡眠改善プログラムの成功事例を発表しました。土井トレーナーは「脳教育によって、脳の機能をバランスよく向上させて睡眠の質を改善することで、共感力を高めてコミュニケーション力を高められることが期待できる。それによって、人間関係によるストレスが軽減され、日々の充実感を高めていくことができる」などのメリットを紹介しました。