私の机の前に1枚の写真が貼ってあります。105歳のサイクリスト、ロベール・マルシャンです。私は今年1月に、ロベール・マルシャンというサイクリストが1時間で22.547キロを走破し、105歳以上の世界記録を更新したというニュースと、人々の喝采を浴びて明るく笑っている写真が掲載されたインターネット記事を見ました。
彼は1911年に北フランスで生まれ、消防士、大型トラックの運転手、伐採作業員、農作業員などの仕事をしてきました。若い頃に自転車競技をやったことはありましたが、本格的に始めたのは67歳のときでした。そして38年後に世界新記録を打ち立てたのです。2年かけて彼の体力を測定した結果、彼の有酸素能力は実年齢の半分にもならない50歳であることが明らかになりました。
このニュースは、私に大きな衝撃と深い印象を与えました。私は当時、120歳という寿命を自ら選択し、120歳をテーマにした本を執筆していたところでした。そんな私にとってロベール・マルシャンは、「年齢は数字に過ぎない」と身をもって示してくれる最高のモデルとなりました。机の前に貼った彼の写真は、「年をとると体が弱くなる」という固定観念を破って体力をつけるという希望と刺激をいつも私に与えてくれます。
「体力はすなわち生命」です。体力は、自分の生命力と比例するので、体力強化こそが生命力をのばす最高の方法です。年をとればとるほど、運動以上の強壮剤はありません。運動は、健康や寿命、エネルギーレベルの強化、感情コントロールに優れた方法です。50歳まであまり運動してこなかった人でも、週3回、早足で30分歩くだけで身体年齢が10歳若返るというカナダの研究もあります。老化とともにやってくるサルコペニア(加齢性筋肉減少症)の予防のためにも、年をとるほどに運動が必要です。運動する習慣は少しでも若いうちにつけておくのがいいのですが、年をとってから始めても遅くはありません。
92歳で、フルマラソンを完走した世界最高齢女性になったアメリカのハリエット・トンプソンは、76歳のときにマラソンをすると決心したそうです。このような人々の話を聞くと「もう年だから…」というためらいや言い訳が引っ込んでしまいます。こうした事例は、何歳になってもどう自己管理するかによって、十分に活力に満ちた健康な人生を送れるという可能性と希望を示してくれます。
年をとると口癖のように「体が言うことを聞かない」と言います。年をとっても体を思うように動かすには、どうすべきでしょうか? 老化は誰も避けられない自然現象であり、年をとるにつれ、体の活力や機能が低下し、程度の差はあるにせよ病気にかかることもあります。しかし大事なのは、自分の人生に老化や病気がやってくるのをただ手放しで静観するか、それとも体の主人として積極的に健康を管理するか、このどちらを選択するのかということです。それは自分次第です。
病気のもとはひとつです。どこかでエネルギーの流れが滞り、生命体が本来もっている自然治癒力を発揮できないことに原因があります。滞っているところがほぐれ、血液と気エネルギーのめぐりがよくなるだけで、たいていの症状は時間とともに回復します。自分の体と親しくなると、体が発信するシグナルに適切に対処し、病気を予防することができます。そうすると、年をとっても病院や薬局に行く回数が減り、そういったものにあまり依存しなくなります。
「私の体に関しては私が医者」という意識で、自ら体力を養っていかなければなりません。意志と努力があれば、いくらでも若く健康に長生きできます。健康と体力は誰かが代わりにつくってくれるものではありません。自分を変化させる力は、自分次第です。人々は、体力をつけると言えば、システム的で専門的なトレーニングを思い浮かべます。そのため、やる前から逃げ腰であきらめたり、何日も続かずにサボってうやむやになってしまう自分に失望したりします。そのため私は、自分が楽しんでいる日常の中の運動法をおすすめします。それはスキマ時間にする運動です。
私は、スキマ時間に行う運動を1分運動と名づけましたが、運動の種類や方法が大事なのではなく、1時間に1分間体を動かしケアすることがポイントです。その場歩き、腕立て伏せ、スクワットなどをしてもいいし、頭を左右に揺らしながら脳波振動をするのもいいでしょう。生活の中でのちょっとした運動ですが、着実に行えば運動になります。体が軽くなり、敏捷になり、活力が生じます。現代人の慢性疾患の原因に挙げられる低体温を予防し、活力を高める効果があります。
体力や健康に最も重要なのは、よい生活習慣をもつことです。健康でいられる習慣や体質を生活の中でつくる必要があります。悪い習慣があれば、健康状態が悪くなるのは当然です。習慣によって人生がつくられます。しかし、長年染みついた習慣やライフスタイルは、すぐには変わりにくいものです。だから、1時間ごとに1回、1分運動をしながら、過去の習慣を変えるのです。
1分運動を3カ月くらい続けると、体だけでなく心の変化も起こり、とにかく体を動かすというライフスタイルの変化が起こります。体に力が生じ、思うように体が動くようになるので、何か有意義なことを自然にしたくなり、新たなことに挑戦したくなります。そんな風に6カ月から1年ほど続けると、60歳以降に完成を夢見る第2の人生を設計することのできる自信と120歳まで健康で幸せに生きられるという新たな希望が生まれます。
寒さで体が縮こまり、外での活動が減っていく冬になりました。室内でも暇あるごとに1分運動を行えば、免疫力を高めて風邪を予防し、元気に冬を過ごせることでしょう。
一指李承憲(イルチ イ・スンホン)
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