[社会・文化]「もったいない精神」が発展させた日本の漬け菜

その名から漬物を連想しがちな「ツケナ類」。でもじつは思わぬ食べ方ができる魅力的な野菜です。育てて楽しい、食べたらおいしい。そんな漬け菜を大研究!

「漬け菜」といっても、その名の野菜があるわけではありません。ツケナ類は、アブラナ科アブラナ属で、ハクサイやキャベツのように球にならない葉菜(ようさい)類の総称。「漬物にするのでこう呼ばれますが、煮たり炒めたり、いろいろな食べ方ができるんですよ」と教えてくれたのは、東京都産業労働局農林水産部の小寺孝治さん。自身も、バラエティー豊かな漬け菜を育ててきた家庭菜園家です。

漬け菜は、奈良時代以前に中国から伝わったとされ、以来、地域ごとに多彩な品種が生まれてきました。大きさや葉の形、味や歯ごたえは千差万別です。「アブラナ科のなかでもカブやハクサイ、コマツナなどは、簡単に交雑します。ハチがこちらのアブラナ科の花粉をあちらのアブラナ科に運べば、それで受粉してしまう。そうしてできた雑種のなかからおいしいものを選び、タネをとって栽培を繰り返すうちに、その地域の土質や気候などに合った漬け菜が生まれていったのですね」(小寺さん)。

でも、それだけでは野菜は後世に残ってはいきません。小寺さんは、漬け菜が発展した一番の理由は、日本人の“もったいない精神”が関係していると考えています。「食べきれないほどとれても、作った野菜を捨てるのはいやですよね。昔は野菜の種類も多くなかったから、漬け菜は日本人にとって大事な栄養源だったはず。収穫したら粗末にせず、冬に向けてなんとか知恵を出して保存したいという気持ちがあったと思うのです。それが、日本の豊かな漬け菜文化の原点にあると思うんですよ」。

地元の人々の食を支えてきた漬け菜は、いま個性的なご当地菜っ葉として全国に知られ、漬物以外の食べ方も見直されています。