[社会・文化] 命を操る技術にどう向き合う―― 「ゲノム編集」の現在地

受精卵の遺伝子を改変して、生まれる前に難病を「予防」する──。そんな技術を可能にする「ゲノム編集」について、国際的な議論が起きている。遺伝病の予防に道を開くメリットが期待できる一方、未知の副作用を起こす、ひいては人類という種そのものに影響を 与えるリスクもあるからだ。命を操る技術に、私たち一人一人はどう向き合えばいいのか。専門家と当事者の思いに耳を傾けた。(ライター・庄司里紗/Yahoo!ニュース 特集編集部)

今年 2 月、米国の科学者で構成される全米科学アカデミー(NAS)は、ヒトの受精卵に対し、ゲノム編集で遺伝子を改変することを条件付きで容認する報告書を発表した。これまでヒト受精卵ゲノム編集の臨床応用(生殖医療応用)に慎重だった NAS の方針転換は世界を驚かせた。
一方、日本の科学アカデミー・日本学術会議の検討委員会は、今年 3 月に公表した素案で 「臨床応用は認めない」との見解を示している。国は4月、出産につながる受精卵のゲノム編集を禁止する意向を明らかにし、基礎研究(臨床応用を目指した、あるいは科学的知見を得るための、実験室のみで行う研究)について国主導によるルールづくりを決定したが、法規制への言及はない。日本は今後、ゲノム編集による受精卵の改変の是非について、どう考えるべきなのか。

「ゲノム編集」とは、狙いを定めた遺伝子をピンポイントで切断し、意図した通りに書き換える技術です。これまでの「遺伝子組み換え技術」に比べ、ゲノム編集はより正確な遺伝子改変ができるという点で画期的な技術といえます。
とくに、2012年に米国で「クリスパー・キャスナイン(CRISPR-Cas9)」という優れたゲノム編集ツールが開発されて以降、農作物の品種改良から遺伝子治療まで、あらゆる領域でゲノム編集を使った基礎研究が急増しました。そんな期待の新技術がいま論争の的になっているのは、「ヒト受精卵の遺伝子改変」が現実のものになりつつあるからです。

受精卵は、いわば人間のすべての基になる一つの細胞です。もしゲノム編集を使い、受精卵の段階で遺伝性の病気の原因となる遺伝子変異を修復できれば、生まれてくる子どもの病気や障害を防げる可能性があります。
しかし、編集に失敗すれば、流産や先天異常を引き起こすおそれがある。妊娠中に失敗が分かれば、人工妊娠中絶が行われるかもしれません。また、この技術がより成熟すれば、能力や外見を親の好みに「デザイン」した子どもが「製造」される懸念もある。だからこそ、ヒト受精卵の遺伝子改変は世界中でタブー視されてきたのです。

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