[社会・文化] 特集「この人の生き方」インタビュー~人生120年時代を迎え、社会に役立つ人生をデザインする

老老介護、孤独死、介護殺人など・・・、超高齢社会の様々な問題がニュースなどでもよく流れている昨今。日本をはじめ、世界は高齢社会問題に真剣に向き合い、解決策を模索しています。

看護部長・アライドメディカル部長・病院副院長として14年間医療現場で働き、定年後に高齢者向けの脳教育・ブレイン体操指導でセカンドライフを楽しんでいる水野恵理子(64)さんの生き方に耳を傾けてみました。

医療従事者として輝かしい経歴をおもちですが、今されている脳教育のブレイン体操指導というのはどのようなものですか?

こんな時代ですから、脳教育が今、どんどん注目の分野になっていると感じていますが、簡単に説明すると、脳が持つ本来の機能を活用する原理とその実践法だと言えます。自然はもちろん、動物や人間も、司令塔である脳には本来自然治癒力が備わっていますが、それを最も活用できていない存在が人間ではないかと思います。医療現場にいた私にとって、脳教育の可能性はとても魅力を感じるというか、希望がありますね。内容はブレイン体操、ブレイン瞑想や呼吸法で構成されています。主にトレーニングをしながら、健康の原理や脳の運営法則、天地人は一つだということなど、講義というほどではありませんが有益な情報を共有しています。

どのような方を対象にしていますか?

指導は働いていた頃からしていましたので、同僚の看護師、患者さんやご家族をはじめ、異職種の交流会などで知り合った方々、通所リハビリセンター、グループホーム、デイサービス、認知症予防カフェ、社会福祉協議会が運営している区のいきいき支援センター(地域包括支援センター)、サマーセミナー、町内会、そして同級生まで、今も継続して関わっているのは約100人です。参加者はほとんど年配の方で、みなさん状況はそれぞれですが、いきいきと元気に過ごされています。ブレイン体操や瞑想はやり方が難しくなくシンプルでナチュラルですので、みなさん喜んでくださっています。
区のいきいき支援センター(地域包括支援センター)が運営しているスマートエージングプロジェクトの一環として1年間指導しているところでは、1年の区切りのときに参加者の評価が高いということで延長され、また今後も水野に指導してほしいと、参加者から1人100円の参加費を頂けるようになりました。ほとんどボランティアでやっていますが、満足して頂いているのが嬉しいです。

高齢の方の参加が多いということですね。認知症予防にもよいとのことですが、認知症対策についてご意見をお聞かせください。

認知症の原因はその種類によりさまざまですが、脳細胞が死滅し障害が起こることに起因すること、または脳の血管が詰まる梗塞巣が増えたり大きくなったりすることによって徐々に脳の機能が低下することが原因と言われています。どうしてそうなるのかを生活習慣から見ると、運動不足のような物理的な原因と、人との付き合いや交流がない生活、目標や夢がない生活が影響しているという考えも多いです。普段どんな生活をして、どんな心で過ごすかが大事になると思います。私が一番力を入れているのがこの生活面で、それをサポートしていきたいと思っています。ブレイン体操に参加していらっしゃる方々は、すでに意志を出して健康のための活動をしているので大丈夫ですが、そうでない、ひとり暮らしで外に出ない方々とどうすれば出会えるのかが課題で、悩んでいます。知恵を集める必要がありますね。
予防も大事ですが、認知症になった時に否定するばかりではなく、どのように受け入れるかという姿勢も大事だと思います。それによって認知症の進行スピードに良い影響を与えることもあると思います。
そして介護する家族の感情的な浄化、心身のケアが非常に大事だと思います。私も長年認知症の家族の介護をした経験があり、どれほど辛いかがよく分かります。これについても何か役立つアクションをしたいと思っています。

医療から今の活動をすることになったきっかけは?

2007年にウエルフェア2007のイベントに病院として参加し、健康への啓蒙活動として血圧や血糖測定などをしていた時に、他のブースでオーラ撮影をしていたので行ってみました。そこで脳教育を知りスタジオに行ってみたところ、イルチ イ・スンホン(李承憲)先生の『脳がわかると人生は変わる』という本を貸していただきまして、「この方は絶対ノーベル賞をとる」と、そのとき思いました。素晴らしい哲学に感動し、忙しいスケジュールの合間を縫って熱心にトレーニングをしました。管理職だからといって休みをとることもなく仕事をする生活でしたが、早朝にトレーニングをしたり、休みをとって脳教育の研修にも参加しました。あれからもう10年が経ちますね。


どんな変化がありましたか?

体が健康になったのはもちろんのこと、自己管理する力がつきました。心の面では、瞑想によって私のエゴをたまねぎの皮のように一枚一枚むいてきて、今やっと本当の自分の姿が細い針のように見えているという感じ。私は価値ある存在だということを頭で理解するのではなく、今は胸が分かります。人に伝える立場になってからは、より成長している感じがします。みなさんとトレーニングを終えて、気持ちよく掛け声をすると逆にみなさんからパワーを頂いています。幸せです。これをしていなかったら私は、買いたいものを買って、食べたいものを食べる、そんな風にしか生きていなかったと思います。私のセカンドライフは素敵だと自分でも思っています。私は120歳まで生きると決めたので、それから気持ちが変わりました。


120歳ですか? 人生100年時代とはよく聞きますが、120歳にはどのような意味がありますか?

私が自分の人生を自らデザインするようになったのは、脳の主になるという脳教育の最終段階を実践するという思いからです。それまでは、60歳になって、70歳になって、そして病気になったりして80くらいまでかなと、寿命は与えられるものだと思っていました。最近、李承憲先生が『人生120年の選択』という本を書かれて、また私は大きな刺激とインスピレーションをいただきました。120歳まで生きると選択したという話を聞いた時に、今まで私は人生に対して受け身だったことが分かりました。医学が発達して最長120歳は考えられる時代になりましたが、それを自ら選択したら、まず体を元気に管理することから始めました。決まった時間になると1分間筋力をつける運動をして、食事もしっかり美味しくいただき、休憩や睡眠も管理する対象として大切に思うようになりました。また一番大事な家族との関係もまだまだ課題はありますが、へそヒーリングやマッサージをしながら良い関係づくりをしています。でも目標にしている自分と今の現実の自分とのギャップによる葛藤も多いです。まだまだなんです、私。(笑)

素晴らしいですね。これからの計画は?

高齢者の集まりにもあちらこちらから呼んでいただいているので、そこでもブレイン体操を始めたいと思います。そして認知症予防や認知症の方、介護する家族に役立つ教育や研修などに関わりたいと思っています。また、スマホを使ってみなさんに健康法、癒しの方法、哲学などをyoutubeでも発信しはじめました。時代に必要なやり方で楽しもうと思っています。また、私のように人や社会に役立つセカンドライフをデザインしていく方々をサポートする役目もしていきます。まだまだ楽しみです。