今月5日に京都大学で行われた第4回グローバルメンタルヘルスセミナーで招待講演をされたジャン・レヒョク教授(グローバルサイバー大学脳教育融合学部)にグッドブレインニュースが特別インタビューを行いました。
1. 今回の講演中に、リアルタイムで脳波測定を行い、瞑想状態の脳波を参加者に見せてくれましたが、それにどんな意味があるのか、また脳教育瞑想の効果について詳しく教えてください。
脳教育瞑想の効果研究は、脳活用の代表研究機関である韓国脳科学研究院を中心に韓国・ソウル大学病院、イギリス・ロンドン大学などの共同研究によって進行され、2010年を基点に「Neuroscience Letters」「SCAN」「STRESS」「eCAM」など、国際学術誌に相次いで掲載されています。身体、情緒、認知思考の統合的な発達を追い求める脳教育の特性上、多様性と個別化が脳教育瞑想の大きなメリットです。
脳教育瞑想の効果は、第一に肯定的心理効果とストレス対処能力を高めます。また、ストレスとうつ病の軽減はもちろん、実際に脳の構造を変化させ、老化防止にも役立つという研究結果もあります。「SCAN」に発表された研究では、思考、判断、感情コントロールの中枢である前頭葉と側頭葉の皮質幅が増し、内側前前頭葉の灰白質と白質の厚さが同時に増加したことが分かりました。
脳教育瞑想がBDNF(脳神経成長因子)とCOMTの遺伝的多型によってカテコールアミンの増減に及ぼす効果が異なって現れた研究結果もあります。これは各遺伝子の類型に適した方法でストレスの脆弱性を回復し、補いながら、心身のバランスを維持できるように影響を与えることを意味します。
他の瞑想との比較研究も注目に値します。脳教育の瞑想がインドのアイアンガーヨガとマインドフルネスより、うつ症状の減少や睡眠の質の向上など、メンタルヘルス改善に効果が見られました。
2.それ(脳波を調節する能力)は、人間と社会のメンタルヘルスに、どのように役立つと思いますか?
メンタルヘルスは脳の状態の反映であり、脳活用によって変わります。脳は情報をインプットし、処理し、アウトプットする一種の情報処理器官ですが、人間の意識の状態によって脳に否定的な影響を与える情報のインプットと処理のしかたが変わります。つまり、良い脳の状態を作るトレーニングと習慣が重要になります。脳の代表的な生体信号である脳波が重要な理由は、人間の意識によって調節可能だからです。人間は脳波の調節法を持っているので、その原理と活用法を学ぶことが、メンタルヘルスの状態を高めるのに役立つと思います。
3.セミナーで、第4次産業革命時代に必要な自然知能についてお話がありましたが、人間の特別な能力とは何ですか? また、能力を最大限に発揮できる教育とはどんなものでしょうか?
自然知能は、人工知能が話題になりだしてから注目されるようになりました。人間とは何か、人間らしさの価値とは何かという疑問を持たせたという点で意味があります。自然知能とは、人工知能が進入しにくい分野であり、人間の脳の根本的な部分です。「私は誰か」に代表される省察、「私はどんな価値を求めるべきか」という創造的な方向性です。省察と創造にもとづく思索と洞察、感性と共感、想像力、共同体的価値など、人間らしさの価値に注目する教育が未来教育の方向になると思います。
4.脳融合学というのは新しい分野の学問だと思いますが、どんな研究をし、何を求めるものですか?
「脳」は21世紀の未来キーワードです。人類科学の頂点である脳科学は、現代の人類文明を作った創造性の根源である「脳」への探求のためのものなので、それ自体が融合学問の性格をもっています。21世紀の脳融合時代の流れの中で、韓国には脳教育分野の学士、修士、博士の課程がすべてあります。4年制の脳教育融合学部課程を備えているグローバルサイバー大学では、脳教育の原理と知識を多様な分野別に学びながら、国際脳教育総合大学院では分野ごとの専門トレーニングや事例研究など、研究の能力を高めることを重視しています。脳の機能と構造、脳の特性の評価、脳トレーニング法など、政府公認ブレイントレーナーの資格を取得できるようにサポートしているのも特徴です。
5.脳教育は、実際に生活の中でどんな役割をするようになるのでしょうか?
脳教育は脳の融合学問であり、技術です。その中でクオリティ・オブ・ライフを高める「ヒューマンテクノロジー(Human Technology)」を追求しています。人は誰でも、健康、幸せ、平和を願っており、自分の脳を正しく活用できる哲学、原理、方法論がわかれば、人生に変化を与えられます。李承憲学長は「脳教育は人間の価値を高める第5次産業革命のカギ」とおっしったことがあります。
6.人工知能と自然知能の融合点は?
人工知能も人間の脳の創造性の産物です。人工知能への恐怖や驚異よりも大事なのは、私たちの態度と意識の方向性です。アメリカ国立科学財団(NSF)は2000年代前半、IT、NT、BT、CTに代表される人類の科学技術の発達は融合技術の形態に発展し、ヒューマンパフォーマンス(Human Performance)を高める方向に進むのが望ましいと提案したことがあります。それは、脳融合時代の本格的な到来を意味し、その中心に人間の脳の正しい活用と開発のための「脳教育(brain Education)」が存在します。人工知能の発展の方向性は、人間の意識の進歩によって変わると思います。そして、脳教育は自然知能を目覚めさせ回復することによって、人間の脳の根本価値を実現するという目的性を持っています。
7.うつ、自殺、自己肯定感や意欲喪失などのメンタルの問題は日本だけではなく、世界が解決すべき社会的な問題ですが、脳融合時代に脳教育を今後、日本社会にどう適用できるでしょうか?
脳教育は身体と脳との相互関係の中で、身体的な自信、感情コントロール、意識の拡張をもたらす様々なプログラムを、年齢別、階層別に備えています。今回のセミナーで藤田紘一郎教授の発表にもあったように、最新の脳科学、医学界が注目する「腸脳相関」の重要性を実際に生活の中で増進させる「へそヒーリング瞑想(Belly button healing mediation)」もその例の一つです。
脳科学によって明らかになった知識より、誰もが持っている脳をどう活用するかによって、人類を脅かすメンタルヘルスの問題も解決策を見つけられると思います。今年の初めに、米ニューメキシコ州議会で「脳教育の日」を制定、宣言しました。脳教育が市民の脳活用を通して、自己啓発だけでなく、健康、幸せ、平和を増進させ、クオリティ・オブ・ライフを向上させた功労から始まりました。日本でも脳教育が多方面に取り入れられていることが、今回のセミナーでよくわかりました。今後、私たちももっと協力していきたいと思います。