十数年の草の根活動が実を結ぶ 米ニューメキシコ州、教員資格に「脳教育」を採用

アメリカ・ニューメキシコ州で、脳教育の講師たちが十数年かけて続けてきた活動が、大きな節目を迎えました。州の公教育局(New Mexico Public Education Department、NMPED)が、教員の資格を上げるためのプログラムに脳教育を正式に取り入れます。正式な運用は2026年10月に始まり、教員の申し込みは2025年9月から受け付けています。

きっかけは2012年の小さな紹介から

始まりは2012年でした。現地の講師たちは、脳教育が子どもの感情のコントロールや学ぶ意欲を高めるのに役立つと考え、サンタフェのボーイズ&ガールズクラブ(Boys & Girls Club)での紹介を皮切りに、地道に活動を広げてきました。州立大学の教育学部、サンタフェの公立学校の校長や教員、モンテッソーリ芸術科学学校(La Tierra Montessori School for the Arts and Sciences)、州の教育委員会など、届ける相手を一つずつ増やしていったのです。

こうした積み重ねは、少しずつ形になっていきました。2017年には州の下院が「脳教育の日」を定める法案を可決し、脳教育が地域に果たしてきた役割を公式にたたえます。翌2018年には、NMPEDが選んだ3つの学校で試験的な取り組みが始まりました。これをきっかけに現地の講師たちは「ニューメキシコ脳教育プロジェクトチーム(New Mexico Brain Education Team)」を立ち上げ、その年の春学期には学校を直接訪ねて授業を行い、参加した子どもたちの幸福感や集中力、自己肯定感が高まる効果を確かめました。2023年からは、教員や職員に向けた研修も続けられてきました。

現場の実績を、オンライン講座へ

今回の採用は、この現場の実績を土台にしています。脳教育の修士課程を持つ教育機関IBE(Institute of Brain Education、アリゾナ州)が、NMPEDと協力してオンライン講座「自己調整および学習準備度の向上のための脳教育ベースの教室介入プログラム(Brain Education-Based Classroom Intervention for Self-Regulation & Learning Readiness)」を開発しました。

12週間の課程で、いま教育現場で注目される「社会性と情動の学習(SEL)」の具体的な方法を、教員自身が身につけて教室で使えるように作られています。講座は理論と実習を組み合わせた5つのパートで構成され、①脳のしくみに基づく学習理論 ②脳教育の基本となる考え方 ③自己調整(集中力や感情のコントロール) ④授業での使い方 ⑤教員自身のセルフケアと、家庭や地域とのつながり、という流れで進みます。

資格制度の選択科目として

ニューメキシコ州では、教員が段階的に資格を上げていく仕組みとして「マイクロ・クレデンシャル」という制度があります。短い講座を積み重ねて力を証明していく方式です。今回の脳教育の講座は、レベル2の教員が最上位のレベル3に上がるための「APL II-III」課程に組み込まれました。

この課程では4つの講座を修めることが求められ、そのうち2つは必修(社会性と情動の学習=SEL、州の教育に関する法律)、残る2つを選択科目の中から選びます。脳教育の講座は、この選択科目の一つとして新たに加わりました。

開発を統括したIBEのイム・ヘラン博士は「この15年、学校ごとに個別に行ってきた教員向けの教育を、オンライン講座として広げることができました。これで、より多くの教員が脳教育の考え方や方法を教室で実践できるようになります」と語っています。