最近、教育の世界のキーワードとして重視されつつあるのが、「非認知能力」です。非認知能力とは、IQ(知能指数)や学力テストで測ることができない能力で、協調性や忍耐力、意欲、創造力、計画性、リーダーシップなど、社会的な力を指します。「社会情緒的コンピテンス(能力)」などとも呼ばれています。
内閣に教育の提言を行う「教育再生実行会議」では、非認知能力の育成が中心的なテーマの一つになっています。次期学習指導要領でも、非認知能力の向上が柱の一つとして盛り込まれる見通しです。
IQテストや入学試験で「正解」を出す能力は、人生の諸問題を解決する能力と同じではありません。勉強さえできれば、成功できるわけではないということです。人生で実際に直面する試練を乗り切るには、ペーパーテストとは異なる能力が求められるからです。
自らの目標や将来の夢を実現するために、興味を失わず、努力し続ける辛抱強さも大事ですが、これも非認知能力の一つです。失敗したり、悲しいことに直面したりしたときにすぐに立ち直ったり対応できる「回復力と対応能力」も、大事な非認知スキルとなります。つまり、非認知能力の育成は、人間としての幸福を手にするためのキーになるということです。
また、非認知能力は、認知能力の土台となる能力だとされます。近年の研究では、幼児期から小学校低学年にかけて非認知能力を育成するのが効果的との結果が出ています。生涯にわたって成長を続けていくための基盤をつくるのが、幼児期から小学校低学年にかけての非認知能力だということです。
専門家によれば、子供の非認知能力を育成したり、評価したりするためには、大人が非認知能力について深く理解し、ふだんの学習やしつけの中で非認知能力というものを意識する必要があるといいます。学校や幼稚園などで教える側にも、さまざまな配慮が求められるようになってくるでしょう。
また、非認知能力を効果的に育成するためには、目標設定や意欲、関心が欠かせないと言われています。これをふまえ、幼児教育や学校教育の現場では、おとなしく座って先生の説明をじっと聞くことを求めるだけでなく、目標に向かって自ら活発に動く力、そして、目標を達成するための粘り強さも伸ばしてあげることが大切になってくると見られています。