[コラム] 環境問題解決のための変化~理想は高く、実践は緻密に

この夏、世界各地で異常気象が相次いでいます。米西海岸や北アフリカなどで最高気温を記録しているほか、日本でも各地で記録的な猛暑が続いており、西日本を中心にこれまでに経験したことのないような豪雨に見舞われました。環境問題に無関心だった人々も、危機を感じずにはいられないほど深刻さが増しています。

海のプラスチックごみの問題も深刻化しています。イギリスの日刊紙「ガーディアン」は2017年6月、イギリスのプリマス大学の研究チームの報告書を引用し、イギリスで獲れた海産物の3分の1からプラスチックのかけらが検出されたと伝えました。また、ベルギーのゲント大学の研究チームは、海産物を食べる人は、毎年1万1,000個のマイクロプラスチックを飲み込んでいるという研究結果を発表しました。エレン・マッカーサー財団は、2050年までには海に魚よりプラスチックのほうが多くなると警告しました。

大気汚染も悪化しており、アメリカの健康影響研究所(HEI)は、2016年には約610万人以上と推定される人口が、大気汚染が原因で死亡したと発表しました。これは、死亡者全体の11.6%にあたるといいます。

環境問題の原因は?

私は、3年前に東アジア学者であるエマニュエル・パストリッチ教授とともに、持続可能な地球のために私たちに何ができるかをテーマに長時間話し合ったことがあります。彼はアメリカの環境学者ガス・スペスの言葉を紹介しました。

「私は、地球環境の最も重要な問題は、生物の多様性の損失、生態系の破壊、気候の変化だと考えてきました。30年間蓄積された科学技術でこのような問題を扱えると思っていましたが、私の考えが間違っていました。環境問題の核心部分は、人々の利己心、欲、無関心であり、これらの問題を扱うには精神的、文化的な変化が必要ですが、私たち科学者はそれをどうすればいいのかがわかりません」

環境問題の核心部分は人々の利己心、欲、無関心という環境学者の言葉に、私はまったく同感です。では、問題解決のための精神的、文化的な変化は、誰がどんな風に起こすことができるのでしょうか?

解決のカギ、地球経営という意識

地球環境回復のために、これからは成功という価値を超え、完成という価値に向かっていくべきだと思います。自然は成功のために開発し搾取する対象に過ぎないという物質主義をもとにした分離意識が環境を害し、環境への無関心をつくり出しています。分離意識を超え、私は自然と一つだという自覚、自然が私たちの生命の源だという自覚、これ一つだけでも人々がきちんと自覚すれば、間違いなく変化が始まります。環境問題を解決する一歩は、すべての人は自然と一つだという事実に気づくことなのです。そのとき、生命の尊重をもとにした地球経営をすることができます。

地球経営は、地球を経営の対象と見ることです。地球を経営の対象と見て地球をまず生存可能にし、その次に地球上に新たな共存志向の文明を誕生させられる経営が必要です。地球経営は地球に対して主人意識を持つ人が、地球について、地球上のすべての生命について、限りない愛を持つこと、つまり、まるで自分の身体や家を管理するように、皆で一緒に地球をケアし、管理することを言います。

考えは大きく、行動は緻密に

地球の未来を考えながら日々暮らすというのは、ある意味、雲をつかむような話に聞こえるかもしれません。自分の生活だけでも忙しいのに煩わしく面倒なことにまで気をつかわないといけないのか? 私が気にしたところで特に何かが変わったりするもんか、と思うかもしれません。地球経営はとても大きな概念で、自分とは関係ないようですが、そうではありません。環境と私たちは絶え間なく相互作用をしています。地球経営が成功するためには結局、私たち自身を変え、家庭を変えることから始めなければなりません。そこから生まれる力で、私たちの社会と地球をより住みよいところに変えられるのです。地球経営の理想は高くとも実践は一歩からです。考えは大きいながらも、行動は小さく綿密に、正直で質素に、誠実に責任を持ってしなければなりません。

人々はたいてい自分が毎日している仕事は小さくて大したものではないと感じています。しかし、些細なことだと思う小さなことがすべて地球の環境や未来と関係しています。「地球経営のために私は掃除をする。地球経営のために節水する。地球経営のために私はマイ箸を持ち歩く。地球経営のために小食する」このような大きな心を持ち、自分の属する共同体の人々と共にアクションするとき、変化が起こります。地球環境のための目標があるとき、日常のすべてが価値あるものに変わります。「私は地球と一つ」という自覚のある人々を中心に、今世界のあちこちで生活文化運動が起こっています。このような方向を選択し、実践するのが地球市民ムーブメントです。

一指李承憲(イルチ イ・スンホン)
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